HOME〜私と家族〜
タクはすっと視線を外して、窓の外を見やる。

「雨、止まないな」
「ね」

梅雨空は、まるで私の心のよう。
ぐるぐると複雑な感情が入り混じって、灰色のどんより空。

「キリがいいところで帰ろう」
「じゃあこれだけ解いちゃうね」

サラサラとシャーペンを走らせ、終わらせる。
意外と簡単でよかった…!

「あ。傘」

昇降口まで降りたとき、カバンをあざっていたタクが唐突に呟いた。

「…まさか、忘れたとか言わないよね?」
「いや、予報では曇りだったから」
「今梅雨なのわかってる⁉ いつ降るかわからないこんなどんより空で傘おいてきたの⁉」

信じられない!
というか天気予報信用しすぎでは?

「なんて…」
「仕方ない…ん?」

言葉が被る。
タクに聞き返すも、首を振られた。
ので、私から話す。

「仕方ないから、入れてあげるよ」
「…マジか」

あまりにも驚いた顔をsるものだから、なんだか恥ずかしくなってきて、
私は広げた傘で顔を隠す。

「な、なによ。どうせ同じ家に帰るんだし、いいでしょ」

雨のせいか人はまばら、こんな中途半端な時間に帰る生徒も少ない。
よって、タクの過激派なファンに何か言われることもなかろうという判断。

「そうだな」

ふ、て嬉しそうな声音に、きっとあの優しい顔で笑ってるんだろうなって思った。
…顔を隠していたのが惜しまれる。見たかった、なんて。
暴走する気持ちにかける歯止めはとうに失った。
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