HOME〜私と家族〜
レポート9
結局、タクは毎日図書室で私が来るのを待っていた。
…行かなかったらどうするつもりだったんだろうか。
図書室には、他にも勉強する人がたくさんいて、主に筆談で教えてもらう。
となりに座るタクの気配が、まるでこないだの映画のときのように、ずっと私を落ち着かなくさせる。

ああ、集中したいのにできない!
じれったさともどかしさと、時間を割いてくれてるタクへの申し訳なさで息が詰まる。

「もしかして、逆効果になってる?」
「え?」
「俺がいない方が集中できそうな気がする。邪魔してたみたいで悪い」

待って、タクが謝ることじゃないの。
悪いのは私なの。

「そんなことない!私が勝手に…っ」

ハッと口を抑える。
今、何を言おうとした?
勢いで口から出そうになった言葉に、愕然とする。

「…勝手に?なに」
「な、なんでもない」

『私が勝手に意識してるだけだから』
そんなこと、まかり間違っても言えやしない。
前に絵梨に言われたことを思い出す。
ああ、まさかそんな。
でもだって。
じゃあなんでこんなにドキドキするの?
ソワソワするの?
タクの隣にいたいのに、いると落ち着かない。
それを悟られたら、それこそ一緒になんか暮らせない。

「変なの」
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