ブルー、ブルージーンズ
大輔が寝室のドアを閉めるまで、あたしはじっと息をひそめていた。

ちょっとでも呼吸したら、嗚咽が漏れてしまいそうだった。叫び声をあげてしまいそうだった。

「コーヒー淹れようっと」

わざと大きな声を出して言って、やかんを火にかけた。

洗い桶にたまったお皿を洗って、蛇口を全開にする。

じゃーじゃーじゃー、水が流れる。

そのうちやかんの笛がぴーぴーいいだした。

うるさい。

うるさいよ、心臓、黙ってろ。

こんなやりかたしかできない。こんなやりかたでしか泣けない。

蛇口をしめて、涙もむりやり止めた。

「コーヒー飲もう。豆挽いて、おいしいやつ」

いまさらひとりになんてなれるわけないじゃないか。

それでも、あたしはひとりになれなくちゃいけない。
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