翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか

「肺に異常はありません」

「心臓にも異常なし。血液量も通常です」

解剖は着々と進み、真っ白なホワイトボードには千鶴の血液量などが書かれ、マルティンとアーサーが千鶴の内臓の写真などを撮っていった。

「今のところ異常はないわね」

碧子がそう言い、フウッと大きく息を吐く。その前で蘭は表情一つ変えることなく、呼吸を乱すことなくメスによって開かれた千鶴の体を見つめていた。

「まだ、髄液や脳を調べていません。原因はそこにあるのではないでしょうか？千鶴さんは十七歳です。この年齢で心臓や呼吸器に異常がないとすれば、脳や髄液が疑わしいです」

淡々と話す蘭に対し、「そうね。決めるのはまだ早いわね」と碧子は微笑む。ゼルダたちも「脳などは明日調べましょう」と微笑み、この日の解剖は一旦終了となった。

「……本当に彼女、十八歳なんですか？」

いつも淡々としている蘭の姿に圭介はポツリと言う。その肩をアーサーがポンと叩いた。