翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか
「蘭は今までたくさん苦しいことを経験してきた。そのせいで感情を表すのか苦手になってしまったんだ。でも、蘭の中にきちんと感情はある」

「はい……」

碧子とゼルダと話していた蘭は、アーサーたちが何かを話していることに気付き、振り返る。そして何故圭介が頬を赤く染めるのか、理解することができないのだ。

そして翌日、集まった蘭たちが脳を調べた結果、千鶴の死因は急性硬膜下血腫だとわかった。



死因がわかったその日、蘭は花鈴の家へと向かっていた。死因を花鈴に伝えるためだ。

「神楽さん、待ってください」

蘭が花鈴の家に向かって歩いていると、後ろから圭介が走ってきた。息は乱れ、蘭が立ち止まるとその隣で膝に両手を置いて苦しそうにしている。

「どうして来たんですか?」

蘭は驚くことなく訊ねる。圭介は「碧子さんに一緒に行くように言われて……」と息を吸ったり吐いたりを繰り返しながら答えた。

「そうですか。では、一緒に行きましょう」
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