黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「別に。たまたま仙台事務所にいる同期と話していたら、彼女の名前が出たから思い出しただけだ」

 伊尾さんは素っ気なく言うけれど、嘘だってわかる。

 だって、この忙しい最中にこんなたまたまがあるわけない。

 きっと、呉林くんと私とのやりとりを聞いて、気にかけてくれたんだろう。

 ぶっきらぼうな彼の優しさを感じて、愛おしさがこみあげる。

「佐原はこのあとどうする?」

 歩きながらたずねられ、私は目をまたたかせた。

「このあと……」
「俺の部屋にくるか?」

 伊尾さんがなにげなく言ったひと言に、私は全力でうなずく。

「行きますっ!」

 その私の剣幕に、伊尾さんは一瞬目を丸くした後、ぷっと噴き出した。

「すごい前のめりだな」
「だ、だって。今週私は事務所勤務で、伊尾さんはずっと現場に出ていて。ぜんぜん会えなかったから……」

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