黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「痛くないです! 大丈夫ですっ!」
 
 私はぎゅっと目をつぶりながら、伊尾さんの視線から逃げようとする。
 
 すると伊尾さんの手に力が入り、さらに距離が近づいたのが気配でわかった。

「そうやって無理をしなくていい。誰がどう見たって痛いだろそれ」
「すみません。見苦しいですよね!」
「見苦しくはないけど……」


 けど、なんだろう。
 
 恐る恐る目を開くと、伊尾さんはじっと私の口元を見ていた。
 
 綺麗な眉をよせ、苦し気な表情を浮かべている。

「……あの男、逮捕する前に一発殴ってやればよかった」

 伊尾さんが舌打ちと共に、ひとりごとのように低くつぶやく。

 そして、長い指が私の腫れた唇を、そっとなでた。

「んんっ!」
 
 背筋に甘いしびれが走り跳び上がる。
 すると伊尾さんは不思議そうに首をかしげた。

「どうした?」

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