黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「じゃあ、どうして不機嫌なんですか?」

 伊尾さんの視線は、すべてを切り裂いてしまいそうなほど冷たくするどい。

 なんでそんなに怒っているんだろう。

 私が首をかしげていると、東海林さんが大きな肩を伊尾さんに寄せながら言った。

「ねぇ、伊尾。潜入捜査は事務官の女性職員にでも頼んで、美緒ちゃんを同窓会に行かせてあげればいいじゃない? せっかく買った服が無駄になるのはかわいそうだもの」

 その東海林さんの言葉に、私は青ざめる。

 伊尾さんがほかの女性職員と潜入捜査で恋人のふりをするなんて、絶対にいやだ。

「いえ、私が行きます!」

 ぴしっと右手を上げながら大きな声で言った私に、伊尾さんは意外そうに眉を上げた。

「佐原、同窓会はいいのか?」
「同窓会なんかより、仕事のほうが大事ですからっ!」
 
 伊尾さんの問いかけに大きく首を縦に振る。
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