君は私の唯一の光
【said 洸夜】




「久しぶり、乃々花。」




そう言った瞬間、乃々花の大きな瞳から、一筋の涙が流れた。




急な事に動揺する。





「乃々花?なんかあったか?」





目を大きく見開いたまま、呆然と俺を見つめている。




“サプライズ見舞い”のつもりだったんだけど、嫌だったのか?




いつ会いに行くか迷ってて、今日は部活もなく、学校も早く終わったから来たんだけど………。






「洸夜くん!!」




「……っ————!?!?」





急に俺に抱きついた乃々花。今までなかった事に、固まる俺。





なんか、嫌なことでもあったのか?
俺の腹に抱きつく乃々花の顔を覗くが、ギュっと目を(つむ)っている。





「乃々………」





「会いたかった………」




「………っ————!」




なんなんだよ今日は!俺が驚かそうと思ってたのに、これじゃ逆だ。





悪態をついても、結局乃々花がこうしてくれるのが嬉しくて。




勝手に、乃々花の頭を撫でていた。




サラサラの色素の薄い茶髪を、俺の指が伝う。癖になりそう、この感覚。乃々花が、俺の服をキュっと握りしめる。





「乃々花、なんかあったか?」




「……………」






聞いても、何も返ってこない。乃々花、本当にどうしたんだ?





「寂しかった……」




え?

すっごく小声で、絞り出すように言った言葉。だけど、俺にはちゃんと届いた。『寂しかった』って言ったよな?





ずっと、抱きついて離れない乃々花。甘えてる時の陽菜みたいだと思った。ただ、俺の心臓の高鳴りが違うけど。





誰かに、甘えたいんだろうな。単純に、そう思った。だから俺も、右手で乃々花の頭を撫でて、左手を背中にまわした。








乃々花が寂しい理由は、わからない。ただ、俺を頼ってくれた事が単に嬉しかった。




たとえ、この想いが届かなくても、側にいたい。


そう、素直に思えるほどに。



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