君は私の唯一の光
【said 洸夜】



乃々花が病室に戻って、5日が経った。




山場の一夜は越えたが、未だに眠り続けている乃々花に、焦りのみが募る。




学校の勉強も、サッカーも、文化祭の練習とかも、全部が手につかない。暇な時間は、ずっと乃々花の隣にいる。



夜も帰らず、ずっと。看護師さんも、深谷先生も、何も言わないでくれるから、ありがたい。普通は怒られるんだろうけど。




家に帰るのは、朝。学校に行く前に寄って、服とかを交換し、風呂に入るだけ。寝るのは学校。幸い、授業を受けずとも、ある程度の成績は取っているから、教師からは何も言われない。




友達は、たぶん松原から事情を聞いてるから、余程のことがない限りは、話しかけてこない。まあ、一部、それがわからない人もいるけど。




「乃々花……」





頭を撫でても、柔らかい栗色の髪が動くだけで、よく映画であるような瞼や指は、無。





お忙しい乃々花のご両親や翔さんは、よくて2日に1回。





ほんと俺、学生で良かったわ。ほぼ毎日、暇だからさ。







「乃々花、早く起きろって。」





松原も、空いてる日は来てくれてるんだよ。みんな、お前が目覚めるのを、待ってるんだから。





「乃々花……」





名前を唱えていれば、目を開けてくれる気がしてきた俺は、イカれてる?




周りになんと思われてもいいや。乃々花が起きてくれれば、それで。






そう思いながら、今日も俺は、眠りについた。







『洸夜……』






夢で名前を呼ばれた時とは違う感じで、飛び起きる。耳に、直で乃々花の声が当たった気がした。





すると、目の前には、確かに起き上がっている乃々花がいる。





元から白い肌は少し青白く、以前よりも痩せ細った体をしているが、元気そうな乃々花がいた。





……夢、だな。都合のいい夢を見てるだけだよ。そう、頭では思うのに、なにか乃々花が生きているっていう確証が欲しくて、脈を測った。




……ちゃんと、波打ってる。ここまで都合よくできてんの?




今度は、俺の頬を殴った。平手打ち。つねるだけじゃ、絶対目は覚めないだろうから。





なのに、ちゃんといる。乃々花が、ちゃんと。生きて、俺のところに戻ってきてくれた。






6日間、ずっと頑張ってきた乃々花を抱きしめる。昨日は、頭を撫でても全く動かなかったのに、今日は、俺の服をギュッと掴んでくれる。






反応が、返ってくる。それだけで、なんだっていいような気がした。





乃々花さえいてくれれば、それだけで、俺は毎日を生きていける。





「おかえり。」




「ただいま。」






なんの特別さも、側から見たらないこのやり取り。





でもそれが、俺と乃々花にとっては、大切で、互いのために必要なんだ。





乃々花、俺のところに戻ってきてくれて、ありがとう。





これからは、ずっと側にいてくれよ。
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