君は私の唯一の光
【said 乃々花】



「ここは、この方程式を使う。」



「なるほど。」




「これは、さっきの実験結果を元に、公式に当てはめて解く。」




「ふむふむ。」





引っ越して1週間が経った。ようやく自室にも慣れて、新しい毎日が始まったんだと実感。




今は、私の部屋で洸夜と受験勉強中。編入試験対策のね。





洸夜、授業イヤー!とか言っておきながら、めちゃ頭がいいらしい。学年で1番だって。寧々先輩が教えてくれた。





んー、スポーツも勉強も出来るって、どんな脳を持ってるんだろう。お兄ちゃんも一緒か。おまけに、2人ともイケメンだし。



いいなぁ。こんなに恵まれてる人たち。




お兄ちゃんの場合、私と同じ遺伝子持ってるくせに、容姿も学力も運動神経も、全部格上。羨ましい……。




「乃々花、ぼーっとしてどうした?」




「え?あ、なんでもない!ちょっと、意識飛んでた。」





「さらっと怖いこと言うなよ。」





「ごめん!」





こんな会話も、今じゃ日常茶飯事。楽しいし、充実してる。






「乃々花、ちょっと休憩しよ。」





「はーい。」





出してた理科のテキストを片付けていると、洸夜が倒れてきた……と思ったら、頭を膝に乗せた。




……なに、この体勢。






「一回やってもらいたかったんだよね、膝枕。」




「ひざまくら……?」




「そ。姉貴が読んでた漫画を無理矢理読まさせられた時に見て、これってどんな感じなんだろ……って疑問に思っててさ。」





「ふーん。」





夕菜さんって、どんな漫画読んでるんだろう。今度聞いてみよ。





「でも、これヤバイね。」




「なにが?」




「乃々花に甘えたくなる。」





そう言って、私の腰に手を回した洸夜に、思わず笑みが溢れる。なんか、かわいい……。男の子に甘えられるって初めて。とはいえ、お兄ちゃんくらいしか、男の人に深く関わったこと、ないんだけど。




そのまま、私は洸夜の髪を撫でる。自分のものとは違って、硬めの髪。でも、サラサラしてる。触り心地がいい。





「頭撫でられるって初めてかも。」




「お母さんに撫でてもらったこと、ないの?夕菜さんとか。」





「もう覚えてないよ。姉貴には、殴られた記憶ならある。」





わぁぉ、夕菜さんたくましい。殴られるって、洸夜はなにをやらかしたんだろう?





「でも、こんなに心地いいのは絶対初めて。」





……洸夜は時々、こっちがすごくドキドキしちゃうようなことを言ってくれる。嬉しいから、もっと言ってほしい。けど、恥ずかしいからやめてほしい。っていう、微妙な狭間にいる私。





洸夜って、絶対女の子から人気あるよね。




こんなにイケメンで、こんなに頭がよくて、こんなにサッカーが上手だなんて、女の子が放っておくはずがない!





「洸夜って、私の前に彼女さんとか、いた?」




“いた。”って返ってくるのはわかってるけど、“いない。”って返ってきてほしいっていう矛盾を抱えながら、恐る恐る聞いてみると、洸夜はポカンとした顔をした。




「いきなりどうした?」




「今、ふと思って。」




「ふーん。いなかったよ。」




「そっか。」





んんん?いなかった……って言った?





「聞いておいて、案外あっさりとした返事だね。」




「あ、いや、あの………」





動揺して、言葉が見つからない。まさか、いないとは思わなかった。絶対人気者で、元カノさんなんて、ゴロゴロいると思ってた。……失礼ながら。





「乃々花は、元カレいるの?」





「え?いないよ。」





まず、私の場合は出会いからしてなかったからね。




「よかった。俺、乃々花の元カレが目の前に現れたら、思いっきり蹴り飛ばすと思う。」





「……なんで?」




「乃々花が、俺以外の男とイチャイチャしてたってだけで、気が狂うと思う……ってか、絶対そうだから。」





イチャイチャって……。






「俺って結構、独占欲とかあるのかも。」





洸夜、意外だな。いつも温厚で、優しすぎて危ないくらいに優しいし、甘えさせてくれるから。





「乃々花、大好き。」




「……私も、洸夜のこと大好き。」




「俺の方が、大好きって言葉じゃ足りないくらいに大好きだし。」




「私だって、すっごい大好きだもん。」





ムキになって言い返した瞬間、洸夜が腹筋だけで起き上がって、私の唇と自分の唇を合わせた。





「隙アリ。」





ニヤッと右の口角を上げて笑う洸夜も世界一かっこいい。






「乃々花、愛してる。」





「私も、愛してるよ。洸夜。」






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