身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「どういうことだ」
「別れよう、私たち」
「お腹の子はどうするんだ?」
「私が育てるよ」

そこで長い無言が挟まった。話し合う余地はあった。今までと同じように謝り合って、仲直りすればいい。そう思いながら、精神的にくたびれきっていた私は、修二との関係を維持する努力を放棄したくなっていた。

そろりと顔をあげて悲しい気持ちになる。修二もまた同じような表情をしていたからだ。出会って八年、交際して三年。修二のことならなんでもわかる。
修二は私と同じ気持ちだ。
疲れたのだ。この関係に。

「どんなに離れても、その子は俺の子だ。サポートさせてくれ」

それは修二なりの答えだった。
悲しい。寂しい。虚しい。それらすべてを凌駕した感情は安堵。もう、これ以上大好きな人と傷つけあわずに済む。
私は静かに頷いた。

「さよなら、修二」

世界で一番、修二が好きだった。だけど、おしまいにする。
私は翌日に家を出た。








< 4 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop