身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
私はすうっと息を吸い込んだ。
ことりと箱をテーブルに置くと、頭を下げた。

「お断りします」
「え!?」

修二が驚いた声を出す。断られるなんて思ってもみなかった? だとしたら、考えが甘すぎない?

「私たちは性格の不一致で別れたの。やり直すのは無理」
「あの頃はお互い若さもあった。守るべき存在……まりあのためならもう一度ふたりで頑張れると思わないか?」

修二は飽くまで説得の姿勢だ。私は小箱をずずいと修二の方へ押しやり、まりあを抱き上げた。

「無理です。絶対に無理」
「両親がそろっていた方がまりあの情緒面に……」
「うちの親が育児に協力してくれてるし」
「金銭的にも……」
「ゆとりあるから大丈夫」

私は冷たく言い、財布から一万円札を一枚出して置いた。ふたり分でもこれで足りると思う。

「ここは俺が出すから……。じゃなくて、陽鞠、もう一度考えてほしい」
「そもそも失礼じゃない?」

私はコートを羽織り、まりあにも着せた。抱き上げて言う。

「まりあが欲しいから、私と復縁って。私を馬鹿にしてるでしょ」

将を射んとすればって? 安く見てるんじゃないわよ。

「まりあは私の娘です。あなたには渡さない」
「陽鞠」

個室を出て、ドアを勢いよく締める。事態を把握できるわけもないまりあはドアに向かっていつまでもばいばいをしていた。

冗談じゃない。馬鹿にするにもほどがある。
まりあがほしいからおまけで私と復縁するだなんて、よくもぬけぬけと言えたわね。
もう、修二となんか会わないんだから!



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