身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
『三ヶ月にいっぺんは絶対に帰国するから』
『無理するなよ。俺も遊びに行くよ。ロスは行ったことがないんだ。楽しみだな』

修二の頼もしい言葉にほっとした。私たちはきっと遠距離恋愛でも大丈夫だ。むしろ、程よい距離が築けるかもしれない。生涯本社勤務というわけでもない。多くの社員は三年から五年で日本支社に戻ってくる。私たちが結婚するならその頃だろう。

しかし、異動の内示を受けてからたった半月で状況が変わった。
私の妊娠がわかったのだ。

結婚はまだ先と避妊をしていた。だけど、一度だけ失敗したかもということがあったのだ。まあ大丈夫だろうとお互い楽観視してしまった一度が、大丈夫じゃなかったのだ。

『産んでほしい』

修二は頭を下げてそう言った。私を送りだしたいと言ったその口で、必死の懇願だった。

『もちろん。絶対産むから』

私は承諾した。妊娠に気づいた瞬間、あれほど大事だった本社栄転がそうではなくなった。もちろん仕事は大事だし、夢だった。だけど、お腹に宿った命以上に大切なものなんてないことも、本能的にわかっていた。今この子を選ばない理由は私にはない。
修二と結婚しよう。改めて関係を構築し直し、ふたりで家族になる覚悟を決めよう。そうだ。最近喧嘩が増えていたのは、私が仕事仕事と忙しくし過ぎたせいもあるのかもしれない。忙しい修二を受け止めてあげられる余裕を持ちたいし、赤ちゃんを迎える準備をしたい。
悩むより、突き動かされるような意志で、私は仕事を辞め、家庭に入ることにした。

双方の両親に挨拶をし、同棲を始め、結婚式の日取りを決めて……。お腹の赤ちゃんはどんどん育っていく。毎日が楽しくて幸せの連続に思えた。
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