身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
その晩だ。
帰宅すると、まりあはいつも通り眠ってしまっていた。
今日は寝かしつけに苦戦したようで、床中におもちゃが散らばり、修二の腕の中でまりあは力尽きたように眠っていた。

「いけるかと思って陽鞠に会いに行ったんだけど、やっぱりよくなかったな。ママーって泣いちゃって、なかなか寝付かなくて。まりあに可哀想なことをしたよ」

さぞくたびれただろうに、修二は眠った愛娘を気遣う言葉を口にする。私はまりあの身体を受け取り、額にキスをした。泣き叫んだようだ。汗でしょっぱい味がする。
寝室に運んで一階に戻ってくると、さすがに疲れたのか修二がソファに横たわっていた。

「お疲れ様」
「はは、修行が足らないわ、俺」
「いや、充分でしょ。まりあ寝てるじゃない」

修二だって仕事の後にまりあの面倒を見てくれているのだ。私以上に疲れているはず。
さらにまりあの反抗と大泣きに合って、精神的にもがっくりきているに違いない。

「修二は本当によくやってくれてる。感謝してるからね」
「はは、陽鞠に褒めてもらえたから、それで元気出るよ」

茶化しているのか、本気なのか、修二はソファから身体を起こそうとする。

「夕飯、親子丼作ったんだ。温めるよ」
「いいのいいの、自分でやるから」

私は手で制して、修二の転がるソファを通り過ぎてダイニングに向かおうとした。
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