身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「ちょっと!」

大慌てで身体を起こし、修二の上から飛び退った。修二も驚いた顔をしている。

「ごめんね!」

修二が口を開く前に私は大声をあげた。

「転んじゃって。重かったでしょ。ホントごめん。不注意だったわ」

修二の言い訳や謝罪が来ないように防御壁みたいな言葉を並べて、私はダイニングキッチンへせかせか移動した。このことについて、これ以上は話さない方がいい。少なくとも今は。ただの事故だったんだから。
鍋の中の親子丼を温めている間に、修二は「コンビニに行ってくる」と家を出ていった。

ひとり親子丼を食べながら、私は考える。
さっきのはなんだったんだろう。
修二は私を抱き締めた。
あれは、私を助けたときのように、反射的なものなんだろうか。それとも、明確な意志があるんだろうか。
ずっとずっと心臓がうるさい。熱でもあるんじゃないかってくらい、顔が熱かった。



< 82 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop