身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「どうせなら、このまま俺がマスオさんしようか。お義父さんたちが帰ってきたあとも」
「調子にのらないで」

ぴしゃりと言い切ると、修二はしょんぼりと立ち上がりお湯を沸かしに行ったのだった。
危ない危ない。
というか、さっきのやりとりが父の盲腸騒ぎで掻き消えたのは、私にとっては好都合だった。


「佐富くんばっかり、まりあちゃんのお父さんを見れてずるいなあ」

阿野さんがそんなことを言う。私たちは開店前の準備をしている。今日は私と阿野さんだけだけど、入荷が少ないので順調だ。

「見ても特にいいことないですよ。まあ、今だけのレアキャラではありますが」

私はすげなく答え、本社へのメールを返す。事務作業も多いのが店長の大変なところ。

「まりあちゃんに似てるんでしょう。まりあちゃん、二歳にして別嬪さんじゃない。パパはイケメン確定。見たいな~」

阿野さんは勝手に想像して楽しんでいる。イケメンですよ。それは間違いない。
大学時代の友達に、和谷修二と付き合っていると話したときは、本当に驚かれた。そのくらい、修二はサークルのアイドルで中心人物だった。
でも、別れてしまえば過去の男だ。そういうものでしょう。

「ご両親の帰国まで居てくれるのはすごく助かるんじゃない?」
「ええまあ」
「じゃあ、ちゃんと御礼しなきゃねえ」

うちの両親も阿野さんも、どこかで修二と私の元サヤを狙っているように思う。確かにまりあを通じて親交は復活したけれど、イコール男女の仲が戻るわけじゃない。むしろ、以前より複雑になっていると思う。
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