ズルくてもいいから抱きしめて。

天城の場合

姫乃に合鍵を渡し、元彼に会いに行く彼女を送り出した。

はぁ〜〜〜

正直いい気分じゃない。

引き留めれば、きっと彼女は行くのを止めただろう。

でも、それじゃ意味がない。

過去に囚われている彼女が本当の意味で幸せになるためには、過去と向き合う必要がある。

俺が彼女のためにできることは、この部屋で帰りを待つことだ。

彼女がどんな選択をしても、全部受け止められる男でいたい。

「あぁ〜〜〜!!姫乃、早く帰って来いよ〜!!」

一人残された部屋には、俺の声が響いた。
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