ズルくてもいいから抱きしめて。
樹さんから“一緒に暮らそう”と言ってもらい、そのままトントン拍子に事が進んだ。

会社への届け出の都合上、人事部や部長にだけ報告して、とりあえず同棲のことはあまり公にはしないことに決めた。

「やっぱり天城と神崎はくっ付いたか!同棲ってことは、そのうち結婚か〜」

そう言って喜んでくれたのは、私たちの直属の上司である企画編集部の部長だった。

結婚か、、、

同棲ってことは、そのうちそういうことになるのかな?

変にプレッシャー掛けたくないし、何て答えたら良いんだろう?

「そうですね。俺はそうなれたら、、、って思ってます。まぁ、とりあえず同棲の件、よろしくお願いします。」

部長への報告を終え、樹さんはさっさと自分の仕事に戻ってしまった。

えっ、樹さん今サラッと答えたよね!?

“そうなれたら”って、、、

ちゃんと先のことも考えてくれてたんだ。

どうしよう、、、

プロポーズされたわけじゃないのに、既にされたような気分だ。

ダメだ!

とりあえず今は仕事しなきゃ!

私は舞い上がりそうな気持ちを抑えて、自分のデスクへと戻った。
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