ズルくてもいいから抱きしめて。
「天城さん!ちょっと待って下さい!」

私は、帰ろうとする天城さんを呼び止めた。

「おぉ、神崎!どうかしたか?」

えっ、何でこの人こんなに普通なの!?
はぁ!?意味分かんない!!

私は段々と腹が立ってきて、天城さんの腕を掴んで勢い良く引っ張って行った。

「ちょっと、こっちに来て下さい!」

「えっ!?おまっ!おいっ!」

天城さんは驚きながらも、そのまま私に従ってくれた。

会社から少し離れた公園に着き、私は掴んでいた手を緩めた。

「神崎、お前なんか怒ってる?どうしたんだよ?」

「私がどうして怒ってるのか分からないんですか!?」

「えっ、俺なんか悪いことした?仕事はいつも通りこなしたし、、、ちゃんと言ってくれないと分からないな〜?」

そう言って、天城さんは首を傾げて考え込んだ。

この人は、、、全くもう!
自覚ないわけ!?
あんな思わせぶりなこと言っておいて放置!?
本当に腹が立つ!!

「この前の事ですよ!!天城さん、私のこと抱きしめましたよね!?『俺はお前の前から消えたりしない』って言いましたよね!?どういうつもりだったんですか!?」

何で私の方がこんなにもヤキモキしないといけないの!?
何でこんなに腹が立つの!?
天城さんは私をどうしたいの!?

「へぇ〜それで怒ってるんだ〜。」

天城さんがニヤッと笑った。

「何で笑うんですか!?私、本気で怒ってるんですよ!!」

「お前さ〜この一週間ずっとそのこと考えてソワソワしてただろ?」

「えっ、、、ちょっと!天城さん、それに気付いててわざとはぐらかしました!?」

どういうこと!?
天城さんはわざと何も言ってこなかったの?

「いや〜お前の反応、分かりやす過ぎ!ちょっとは俺のこと意識してくれた?まさか本気で怒られるとは予想外だったけどな〜」

「私のことからかったんですか!?ひどい!!」

何なの、この人!?
この一週間、私がどんな気持ちで過ごしてきたと思ってるの!?
腹が立ち過ぎて悲しくなってきた。

私の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
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