ズルくてもいいから抱きしめて。
姫乃が熱を出して倒れてしまった。

俺が橋田の件を上手くフォローしてやれなかったせいで、心労をかけたのだろう。

それなのに、姫乃はこんな時にまで“俺に迷惑をかけた”と気にしている。

大切な彼女の看病をするのに迷惑なわけがない。

姫乃は元々我慢し過ぎる所がある。

もっと俺に頼って欲しい。

笹山さんではなく、俺の前でだけ泣いて欲しい。

そんな風に考えながら姫乃の頭を撫でていると、姫乃が自ら最近悩んでいたことを話してくれた。

姫乃は、自分は橋田より劣っていると感じていたらしい。

確かに橋田は美人で仕事もできる、いわゆる“イイ女”だとは思う。

でも、俺にとっては“それだけ”なんだ。

自分から望んでこんなにもそばにいたいと思える女は、後にも先にも姫乃だけだ。

姫乃といると、俺は自然体でいられる。

男としてのちっぽけなプライドなんて、もうどうでも良いやと思える。

甘やかしてるようで、一番甘やかされてるのは俺の方なんだ。

姫乃が思っている以上に、俺は姫乃を愛してる。

そのことが、どうか姫乃にも伝われば良い。

どうすれば伝えることができるのだろうか。
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