ズルくてもいいから抱きしめて。
慎二の写真集が完成間近になり、発売日の調整や宣伝方法など会社全体が動き出した。

他部署との打ち合わせが増え、普段あまり話さない人たちと関わる機会も増えた。

「神崎さん、久しぶりだね!広報の担当俺なんだ。神崎さんと一緒に仕事できるなんて嬉しいな〜よろしくね!」

この人は確か、、、広報部の前川さん。

前川さんは社内で会う度に声を掛けてきて、飲みの誘いも頻繁だった。

樹さんとお付き合いを始めてからは、“彼氏がいるので無理”と伝えてからは誘われなくなっていた。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

少し気まずさは感じるものの、私は顔に出さないよう努めた。

「そんな堅苦しい挨拶は止めようよ。一緒に飲みに行ったこともあるんだし、仲良くしようよ。」

「あぁ、、、はい。」

私、この人苦手かも、、、。

樹さんとは真逆というか、ノリがとにかく軽い人だな。

私に声を掛けて来てた時だって、どこまで本気なのかよく分からなかった。

一緒に仕事する相手にしては、かなりやり辛いタイプかもしれない。

私は不安を覚えつつ、とにかく目の前の仕事に集中することにした。



「ねぇ、神崎さん。キミ、彼氏と別れる気ない?」

広報部との打ち合わせをしていると、担当の前川さんが突然変なことを言い出した。

「えっ?突然なんですか?」

「俺、神崎さんのこと諦め切れないな。こうやって仕事で顔を合わせると、やっぱり可愛いんだもん。早く彼氏と別れてよ。」

前川さんって、すごくしつこい人だな。

どうしよう。

あまりキツく言い返すとこの後の仕事がやり辛くなるし、だからと言って曖昧にするとしつこいだろうし、、、

私はかなり迷ったけれど、毅然とした態度を取ることにした。

「別れる気はないですし、既に将来を考えて一緒に住んでいます。だから、この話はもう終わりにして、仕事の話をしませんか?」

「はいはい、わかりましたよ。」

前川さんは、少し不機嫌になりながら答えた。
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