夫婦未満ですが、子作りすることになりました
あっ。これはまずい。ドキドキしてきた。私をずっと好きだなんてどういうこと?と期待で胸がいっぱいになっている。
「ちゃんと話そう凛子」
このままだと甘い言葉に流されて、婚約を継続してしまうかもしれない。ヘルプだ、お母さん。
「凛子。さっきから聞いてたら、あなたは結局自分の婚約者の話をきちんと聞いていないのね。自分の中だけでモヤモヤ考えて。それ、凛子の悪い癖よ」
ああ、お母さんはダメだ。明日菜! 明日菜、ヘルプ。ダイニングから顔半分だけ出して覗いていた彼女に視線を送る。すると明日菜はひょっこり出てきて、ため息をつきながらこちらへ寄って来た。
「凛子。私も賛成。御曹司マジっぽいじゃん。もう一回、ちゃんと話してきなよ」
ええ、明日菜も?
驚いてふたりを見比べるが、そのすきに零士さんは私の手をとり、立ち上がらせる。
「行こう。凛子に見せたいものがある」
「えっ、あのっ」
「実家にあるんだ。ずっと凛子を好きだったっていう証拠が」
「零士さん!?」
私の手をエスコートしてはいるが、彼は強引に引っぱっている。「失礼します」と母に声をかけて、私を連れたままリビングを颯爽と出ていった。
母も、明日菜も、彼の車に乗せられる私を、玄関から手を振って見送るだけだった。