夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「大丈夫? 痛いところはない?」
「だ、大丈夫……うぇーん……」
「戻ったら、ちゃんとお母さんに話して。しばらく呼吸が止まっていたんだから、念のため病院で診てもらったほうがいいよ」
「うん、わかったぁ」
よかった。とにかく無事で。女の子を抱きしめてたままホッとして尻餅をつく。すると彼も心底安堵した顔をして覗き込み、「よくあんなことできたな」とつぶやいた。
「……あなたこそ、どうしてできなかったのよ」
私は我慢ならなかった。この人はなにもせずに見ていただけだ。攻撃的な目で睨み付け、年上相手だが敬語を使うのもやめた。そんな私に彼はギョッとして顔が強張っている。
「な、なんだよ」
「この『救命救急の手引き』の冊子はね、区が発行しているものなのよ。神代製薬の営業所にも置いてあるし、ボランティアの人も学校に講習に来てくれたはず。どうして学校で習ったはずのことを、いざというときにできないの!」
「そ、それは……」
「あなたのご両親、どちらか知らないけど、神代製薬に勤めているんでしょう? 親が命を救う素晴らしい仕事をしているんだから、私たちだってたくさん勉強して、お母さんの子どもで恥ずかしくないようにしなきゃ」