夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「と、いうわけだ、母さん」

突然、零士さんは私の手を握って引き寄せ、お母様に見せつけるようにギュッと繋いだ。彼の手は熱くて、初めてきちんと愛が伝わってくる。

「凛子がいなきゃ今の俺はなかった。跡継ぎを産むための結婚なんて考えないでくれ。例え子どもができなくても、俺は彼女を手放す気はない」

零士さん……。それは私がずっと思い悩んでいたこと。跡継ぎのプレッシャーから解放されたなら、愛する零士さんとの結婚になんの障害もなくなるだろう。

彼の手を握り返し、私もおそるおそる、お母様の表情を伺った。隣の若葉さんもなぜか私たちと同じ視線を送り、加勢してくれている。

お母様は静かにこちらを見つめている。審判の時。お願い、許してほしい。こんなに私を好きになってくれるのも、そして私が好きだと思えるのも、零士さんだけだ。彼と幸せになりたい!

「いいんじゃない? あら私、子どもができなきゃお別れしなさいなんて言ったかしら?」

かわいらしく首をかしげたお母様に、私たちはキョトンと顔を見合わせた。
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