最後の一夜が授けた奇跡
「季里」
俺が季里を抱きしめ背中をさすりながら名前を呼ぶと季里は不安そうに大粒の涙を流し、全身を震わせながら俺の方を見た。

「ごめんなさい・・・ごめっ」
涙に言葉を詰まらせながら俺に謝る季里。

「どうして謝るんだよ。めちゃくちゃうれしいじゃん。」
「・・・え?」
「俺たちの子供だぞ?うれしいに決まってんじゃん。」
思わずこぼれた笑みに、季里が驚いたように俺を見る。

「今まででいちばん最高の出来事だろ?俺・・・ごめん、こんな時なのにめちゃくちゃうれしい。」
嬉しくないわけない。

今の状況を考えれば手放しに喜べる状態じゃないかもしれない。
でも、愛する人との子供を授かったんだ。うれしくないわけない。
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