最後の一夜が授けた奇跡
「私も律樹さんも、生まれた時からあなたとは生きる世界が違う。私たちはほかの人よりも裕福な生活が保障されるかわりに、ほかの人が背負わなくてもいい運命を背負ってしまうことが決められているの。」
淡々と話していくその人に、私は目をそらすこともできず話を聞くしかない。
「・・・」
「あなたがしていることは、律樹さんが今まで積み重ねてきたことも、家族も、何もかも捨てろって言っているようなものなのよ?私たちのように、ほかの人とは違う運命を背負って生まれて来た人間にはあきらめも大切だけど、ちゃんと守らなくてはならない、背負わなくてはならないという覚悟も小さなころからあるの。」
「・・・」
改めて人から言われると、心に刺さる言葉がたくさんある。

「あなたがしていることは、律樹さんを苦しめて、すべて今までの人生を否定させているようなものなの。」
確かにそうだ。

そうならないように・・・離れるつもりだったのに・・・結局・・・私がそうさせてしまっている。
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