最後の一夜が授けた奇跡
俺がやっと社長に就任して、季里と一緒にいられるように結果を出さなくてはと気合を入れていたその時、季里はあの夜、俺から離れる決断をしてしまった。

もう何年も俺は季里を待たせてしまった。

俺は【ASAKAWA】の後継者として、ちゃんと周囲に認められてから、季里とのことを両親にも認めてもらえるようにしたいと思っていた。
彼女につらい思いはさせたくはない。

ずっと、一生季里と一緒に生きていくためには、避けて通れない道だと思っていた。

でも、結果としてそれが、その長い時間が季里を不安にさせていた。
季里の人生を俺の人生に縛り付けて、つらい思いをさせてしまった。

あの夜、俺に何度も謝った季里。
謝るのは俺の方なのに、つらいことばかり言わせて・・・。

俺はあの夜、初めて自分の運命を呪った。

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