最後の一夜が授けた奇跡
離れたくないと思いながらも、別れるなんて嫌だと思いながらも、何も言えなかったのは、まだ今の俺では季里の人生を縛りつけてしまうだけで、つらい思いをさせてしまうと、自信を持てなかったからだ。

だから、あの夜はすぐにでも言ってしまいたい言葉を飲み込んで、言えない言葉の分、俺は季里と体を重ね、口づけを交わしながら、想いをぶつけた。


少しだけ。

少しだけ離れることを選んで、俺は全力で、なるべく早く季里を迎えに行こうと決めていた。

きっと一人で季里は泣いてる。

きっと季里は一人で苦しんでる。

そんな季里を・・・迎えに行ける男になれるように、俺は結果を出すことに専念した。

自分の運命に逆らえないまま生きて来た俺が、自分の運命に初めて打ち勝ちたいと思った。
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