ブラインドネス・シンドローム
4.










朝日の眩しい感覚は襲って来ないけれど、確かに朝であるということを知らせるスマートフォンのアラームが鳴り手の感覚だけでアラームを止めた。

アラームを止めて、このアラームで起きなければ仕事に行かなければいけないという使命感に似た何かが私を襲い、ゆっくりと体を起こした。

重たい瞼を擦りながら目を開けてみるけれど、寝ぼけているのか視界がぼやけたままな状態が続き首を傾げた。

そういえば昨日の夜はいつ家に帰ってきて、寝たのだろうかと思い出してみるけれどハッキリとした記憶があるはずなのにそれすらもぼやけて思い出せない。

そんな私に追い討ちをかけるかのように、見知らぬ男性の声が私の鼓膜を刺激した。


「千鶴さん、おはよう。よく寝れた?」


透明感のある透き通ったその声には温もりが宿っていて、聞いているだけで心地よいと感じられる。

そんな声の主に私の名前を知られているなど、そんな話あっただろうか。


「うーん、もしかしてまだ寝ぼけてる?朝ごはん出来てるよ。診断書もさっきポストに入れてきたから、今日からゆっくり休養してもらうからね」


寝ぼけているのだろうか、それともまだ夢の中なのだろうかと考えていたが、朝ごはんという言葉にパズルのピースが揃うかのように意識がハッキリしていく。





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