紅一点
“狭いんだから、奥でやれよ”等と
弁護士は、私達を押しやって、
懐中電灯であたりを照らしながら、
井戸の様子を確認していた。
…が、
『?おい!!ちょっと
オマエら黙れ!…誰か来る。』
井戸の上を照らしていた弁護士が、
暴れる私達を、声をひそめ制した。
気配を殺す私達に気づかず、
その誰かが、井戸の上から、
灯りで底を灯りで照らしてくる。
白い光が井戸の中の様子を
確かめる様に、そこら辺を
蠢いている。
「ホントだ。あの制服、
間違いねぇ。三好の学校のだ。」
「ほらな、死んでんだろう?」
「この高さから飛び込んで
生きてるはずねぇよ。
もう2日も経ってるし。」
数人で見ている様だ。
恐らく…昨日…
こちらでは二日前なのか。
あの日追ってきた奴らの様だ。
『おい、アイツ等何者だ?』
弁護士が問う。
奴らは、所謂、
半グレ組織の人間だ。
『んー。半グレ銀行員と
闇金の息子だな。
手を組んで、女の子騙して
一儲けしてるんだよ。
お抱えの弁護士もいてタチが悪い。
法外高利貸しからの
風俗斡旋仲介で手数料収入を
ニギニギしてる、そんな奴らだよ。
…まぁ…事故なんだけどさ。
顔面に一発入って
鼻の骨折れちゃって
追っかけ回されたんだよね。』
などと成り行きを離せば
弁護士が呆れる。
『…お前、それ傷害罪だろ。
っつーか、ガキがそんなヤバい
借金すんな。クズ。』
『ガキだから、正規ルートで
借金できないんだよ。
親が蒸発したんだからから
仕方ないじゃんよ。
高校だってお金がいるしさ。
卒業まで、まだ数ヶ月あるし。』
背に腹は変えられない。
奨学金を貰うにも
申し込むタイミングは
とっくに過ぎた。
手短に事情を話せば
弁護士もブローカーも
まぁまぁ聞く話だと、
大して驚きも同情もしなかった。