紅一点
『事故って…何やったら
鼻の骨折れるんだよ?』
ブローカーが怪訝な声で
独りごちる。
『んー。大した事ないよ。
スロープ沿いの
ガードレールの上を走ってたら
たまたま足が滑って2〜3m落ちた。
たまたま、落下地点が
女の子におイタしてた
あいつらの頭の上でね。
ほんと、たまたま、
その内の1人の顔面に
着地したんだよね。』
アレを不幸な事故と呼ばず
何と表現しようものか。
『お前の説明の九割は、
意味が分からねえな。
顔面に落ちた事しか
理解できない。』
弁護士が溜息をつく。
『でもまぁ…
女の子を食いもんに
したヤツを見逃した事が
池田屋にバレたら面倒だ。
一発、脅しておくか。』
そう言って弁護士が
スーツの内ポケットから
丸い球をいくつか取り出し
掌の上で何か確認している。
『あった。…まさか
こんな異界で使用するとは…
果たして動くかどうか。』
『ああ“言霊”か
ここでも動くのか?』
…言霊?
言霊って、カタチあるの?
異世界から来た2人は
当たり前の様に
その球体が浮遊し
ゆっくり上昇する様を
見守っている。