ブエノスアイレスに咲く花

僕たちは最寄駅に向かって
線路沿いを歩き出していた。

僕はメンソールのフィルムを全てはがしてから、
ライターを店に忘れたことに気付いた。


夜になっても蒸し暑く、風はない。

酔って体温の高い首筋や腕には容赦なく
湿った空気がまとわりついてきた。


相沢は彼女に、
僕がテレビをつけたままでは眠れないこと、
前の彼女(サキをそういう設定にした)と
ぺペロンチーノを作る際、
フライパンにオリーブオイルを敷き、
とうがらしを入れるタイミングは
火をつける前か後か
で大いに揉めたことなどを話していた。

彼女は時折僕を振り返りながら、
始終楽しそうに笑っていた。
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