婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「えっと……これは一体……」
「ひとつは25歳の誕生日プレゼント、ひとつはプロポーズの贈り物……ってとこかな」

 言いながら、彼は自然な仕草でさっと箱を開けてみせた。紅ならば、箱に触れるだけで手が震えてしまいそうだが、宗介にとってはヘイリーくらいなんてことはないらしい。

 ひとつは1……いや2カラットはありそうなダイヤの指輪。もうひとつは妖しいまでにきらめく真紅のルビーの指輪。

「店でしばらく悩んだんだけど、選びきれなかった。やっぱり王道でダイヤかなと思ったんだけど、紅の名前にちなんだルビーも捨てがたくて。結局どっちも買ってきた」

 八百屋で大根と人参、どっちも買ってきたよ。そんなノリで彼は言う。

(住む世界っていうか……もはや惑星が違うレベルかも)

 紅は気が遠くなりそうだったけれど、宗介はさらに紅を悩ます言葉を続けた。

「約束の25歳の誕生日だ。紅、俺と結婚してくれる?」

 色素の薄い柔らかそうな髪は染めているわけではなく生まれつき。182cmのすらりとした体躯に甘いマスク。人当たりのいい穏やかな性格。老若男女、誰の目から見ても彼は完璧な王子様だった。
 
 そのうえ、神様は彼に商才まで与えてしまうのだから贔屓がすぎるってものだろう。
 学生時代に開発した料理レシピのアプリが大ヒットしたのを足がかりに、いまや国内有数のIT企業のCEOとなってしまった。
 



 

 




 


 

 

 
 
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