誓いのstatice

〜マスターの回想〜

『「えりっ‼︎」

俺は手伝いをして貯めたお小遣を手に握りしめ
絵里の家の前に立っている


「ゆうとくん、どぅしたの⁉︎」


「あのなぁー、スぅ…タぁーチスのお花が欲しいんだっ‼︎」


俺は握りしめていたお小遣いを
絵里の目の前に差し出す


「うん!待ってて!…ママー、ゆうとくんがねー」



絵里は店の奥へと走って行った



「あら、優人くん、こんにちは」




絵里に引っ張られながら
店の奥からおばさんが出てきた




「スターチスのお花が欲しいの?」


「うん!今日ねぇお母さんのお誕生日だからお花をあげたいんだ!」



おばさんは「ちょっと待っててね!」と言うと
すぐにスターチスを用意してくれた



「おばさん、ありがとう!」

(よしっ!きっと母さんも喜んでくれる!)



俺はラッピングされた
スターチスを抱きかかえ
ワクワクしながら家に帰った




「ただいまー」



キッチンで夕ご飯の準備をしている母さんの元へ駆け寄る



「あのねぇー、今日、
母さんのお誕生日でしょ!
だから、これあげるー!」



俺は手に抱えていた
スターチスの花を
母さんに差し出す



「ありがとう、優人」




母さんはしゃがんで
俺の頭をポンポンと撫でてくれた




「でも、このお花は受け取れないの…
ごめんね…。
優人の気持ちだけもらっとくね」



母さんは微笑みながら
切なそうな顔をしている



「……グズッ……」




俺は再び夕ご飯の準備に取り掛かる
母さんの背中を見つめる



(なんで?母さんはお花を受け取ってくれないの?…喜んでくれると思ったのに…)



「……グズッ…グズッ…」




気が付けば俺の目からは
大粒の涙が溢れ出ていた




「優人、ちょっといいか」




親父は鼻を垂らして泣いている俺を
閉店作業を終えたばかりのお店へと
連れて行った




「あのなぁ、優人、
今から話すことは男と男の秘密だ、
母さんには内緒だぞ」



「…グズッ……うん」



俺は鼻をすすりながら
親父の話に耳を傾ける




「優人が母さんに渡そうとした
この花は特別な花なんだよ…」



「とくべつ…な…お花…?」



親父は俺が買ってきた
スターチスの花を
力強く見つめている



「あぁ、そうだよ。
父さんが母さんに渡す特別な花。
一年に一度"これからもずっとあなたを幸せにします"って
約束をする花なんだ」



親父は俺の頭にポンと手を乗せた



「だから、優人が大きくなって
大切な人が出来たら
"あなたを幸せにします"って
約束をしてこの花を渡すんだぞ」




「…うん!俺、大きくなったら
父さんみたいに
お嫁さんにこのお花あげる!」




「男の約束だぞ!」





〜回想終わり〜


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