もう離さないでね
そのとき、タイミング悪く聖那がきた。

『聖那…』

はっとした様子で翔が離れていく。

どこか寂しく感じた。

「俺の彼女に手ぇださないで」

低く、厚みのある声で聖那が言った。

あたしもこんな聖那を見るのは初めてだから、内心焦った。

「…悪かった」

それだけ言って去っていく翔。

待って。なんてことは言えない。

でも、今ここで別れたらもう話せない気がした。
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