へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目

「言われなくても、帰るし」



 俺はそう言うと

 泊まり用品が入ったボストンバックを、
 勢いよく掴んだ。



 ダイニングテーブルに取り残された
 冷めた料理たち。



 マグカップに描かれた
 目つきの悪いドーベルマンに睨まれ。


 俺のために用意された物の
 お礼も言えぬまま帰ることに、
 チクリと胸が痛む。



 玄関で靴を履いた俺に

 蓮見は、小さな箱を手渡してきた。



「これ、返す」



 俺がクリスマスにあげた
 オルゴールじゃん。



 もう会いに来るなって
 突き放されている気がして

 俺の目じりもカッと上がる。



「いらねぇなら、蓮見が自分で捨てろよ」



「ヤダ……」



「めんどくせぇこと
 俺に押し付けんじゃねぇよ」



「違うし……」



「はぁ?」


 怒りをぶつける俺の瞳を
 蓮見はまっすぐに見つめてきた。



 大粒の涙を流したまま。

 苦しそうに顔をゆがめて。

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