転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
(……なんで、ピンクのスイートピーだったんだろう)

 昨日、思いきり寝坊して昼過ぎに起きたら、王宮から花籠が届けられていた。ピンクのスイートピーをメインに、何種類かの花を組み合わせたものだった。
 添えられていたのはエドアルトの手紙によれば、剣をつきつけてしまった詫びらしい。そこまで気にするほどのことではないのに。

(たしかに、完璧に気配を消していたら、何かあるんじゃないかと思われるわよねぇ……)

 あまりにも一度に多数の人と会って緊張していたからか、あの時はどうかしていた。
 厳重に警護されている王宮の中なのだから、あそこまで完璧に存在感を消す必要もなかったのに。存在感を多少薄くする程度だったら、きっとエドアルトも見逃してくれた。

(というか、貴族の執着が思っていた以上の方が驚きよね……!)

 日本で、それなりに人の目にさらされるのに慣れたと思っていたけれど、甘かった。アイリーシャの考えはめちゃくちゃ甘かったのである。
彼ら、獲物を逃す気皆無であった。
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