転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
捨て犬――だろうか。
「殿下、ちょっといいですか」
足を止め、子犬を怖がらせないようしゃがみこんだ。
真っ黒な犬は、つぶらな瞳でアイリーシャを見上げた。赤い舌がちろりとのぞく。手を差し出したら、尾を振って、手のひらをぺろりと舐められた。
「わあ、可愛い! ……君、いい骨格してるねぇ……きっと大きくなるわね。中型犬より、もうちょっと大きくなるかしら。大型犬、かなぁ……?」
嫌がっていないと知って撫でてみると、骨格はしっかりしている。
汚れてはいるが、さほど空腹を覚えている様子はない。母とはぐれたとか、捨てられて数日とかそんなものだろうか。
目が合ってしまったら、捨てていくことはできなかった。公爵家は広いし、子犬の一頭や二頭、飼えないはずもない。
後ろからくすりと笑う声がして、すっかりエドアルトのことを忘れていたのに気がついた。
「君は、そういう顔もするんだな」
「で、殿下こそ……!」
こちらを妙に微笑ましそうな顔をして見ている。
必要以上に近づいたら、面倒なことになるとわかっているのに。
「この子、連れて帰ります。放っておけないし……」
「殿下、ちょっといいですか」
足を止め、子犬を怖がらせないようしゃがみこんだ。
真っ黒な犬は、つぶらな瞳でアイリーシャを見上げた。赤い舌がちろりとのぞく。手を差し出したら、尾を振って、手のひらをぺろりと舐められた。
「わあ、可愛い! ……君、いい骨格してるねぇ……きっと大きくなるわね。中型犬より、もうちょっと大きくなるかしら。大型犬、かなぁ……?」
嫌がっていないと知って撫でてみると、骨格はしっかりしている。
汚れてはいるが、さほど空腹を覚えている様子はない。母とはぐれたとか、捨てられて数日とかそんなものだろうか。
目が合ってしまったら、捨てていくことはできなかった。公爵家は広いし、子犬の一頭や二頭、飼えないはずもない。
後ろからくすりと笑う声がして、すっかりエドアルトのことを忘れていたのに気がついた。
「君は、そういう顔もするんだな」
「で、殿下こそ……!」
こちらを妙に微笑ましそうな顔をして見ている。
必要以上に近づいたら、面倒なことになるとわかっているのに。
「この子、連れて帰ります。放っておけないし……」