転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 友人達の期待も、先生の期待も。常にぴんと張り詰めていた気持ちを、寝る前だけは安らかにしたい。そう思って、ラベンダーのポプリを部屋に置くようになったのだった。
今となっては、まったく必要はないけれど――。

(お母様、どのあたりにいるのかしら)

 母もアイリーシャがいなくなったことに気づいているだろう。もうちょっと人が少なくなれば、あちらから見つけてくれるはずだ。

(……護衛にも見つけてもらいやすくした方がいいだろうし、高くて目立つ場所に移動した方がいいかな)

行儀は悪いけれど、民家の塀に登らせてもらおうと思っていたら、不意に目にとんでもない光景が飛び込んできた。

(……あれ?)

 祭りの華やかな雰囲気からすると、ちょっと地味過ぎる装いの男達。なぜか、胸騒ぎがして彼らの動向を目で追った。
 男達はアイリーシャに見られているのには気づかない。彼らの視線の先を見てみると、そこにいたのは一人の男の子だった。

(……あれ?)

 男の子は、男達の接近に気付かない。
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