転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 この花は希望者に分け与えられるのだけれど、この花を使って作ったポプリを枕の下に入れておくと安眠が約束されるのだとか。
 その場に集まっていた人達がいっせいに馬車の方に向かっていく。

「わわ、わ!」

 手をしっかり繋いでいなかったせいで、手が離れてしまった。そのままたくさんの人に流されて、母との距離が空く。おまけに見失った。

「お母様、どこ?」

 周囲を見回し、母の姿を探す。けれど、今日は皆ラベンダー色をどこか身につけていて、母の姿を見つけ出すのは難しい。

(……まあ、こういう時焦ってもしかたないわよね)

 少し離れたところに護衛もいるはずだ。うかつに動かない方がいい。
 こういう時は焦ってもしかたないのだ。馬車を追う人達をよけて、、邪魔にならない場所に移動する。
鼻をかすめるラベンダーの香りに、妙に心が落ち着くのは、前世でもラベンダーの香りを愛用していたからかもしれない。

(今は不眠には悩まされてないんだけど)

 前世では、両親の期待を裏切れなかった。
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