Water lily〜許されぬ罪〜
「なら、この戦争を終わらせるために研究を進めないとな」

ポンと同僚に肩を叩かれ、私は「そうね」と微笑む。私も彼も白衣を着ている。だって私たちは科学者だから。

エリートと呼ばれる者たちが集まっているこの研究所で働けるなんて幸せだ。戦争中だというのに、綺麗な服を着れて住むところも保証されている。もちろん食事にだって苦労しない。科学者になれるということは、この国では一生安心して暮らしていけるということなの。

「とりあえず、今日は昨日の実験データをまとめるところからね」

私は今、世界を平和に導くための研究をしている。科学なんて関係ないって思っているかもしれないけど、安っぽい正義感だけが詰まった演説だけじゃ世界は平和になれない。

私は、人の脳内から怒りや憎しみにつながるホルモンを幸福ホルモンに変える装置を研究している。この装置を山の中に設置し、街に雨のように物質を降らすことで人々の心を科学的に変えていくんだ。
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