私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
熱風が凄かったが、一歩一歩炎に包まれているお兄ちゃんに近づき、両手を大きく広げて抱きついた。
『お兄ちゃん……ダメだよ。世界が……壊れちゃう』
その金色に光る目を見て懇願するように言ったら、お兄ちゃんとやっと目が合って……。
ハッと彼が息を呑む音が聞こえた。
ああ、やっと私を見てくれた。
『お兄ちゃん、泣かないで。撫子が一緒にいてあげる』
ニコッと笑ってそんな約束をお兄ちゃんにして、いつも私の夢はそこで終わる。



「……さま、撫子お嬢さま、起きてください」
よく知った青年の声がしたが、その声が聞こえないよう布団を頭から被った。
「う……ん、もうちょっと寝る」
「ダメですよ。学校に遅刻します」
青年の口調が少し厳しくなるが、眠くて起きる気にならない。
このふかふかのお布団が温くて丁度いいし、春だから心地よく眠れるのよね。
春眠暁を覚えずとはよくいったものだ。
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