私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「じゃあ……朝食抜きで……いいから」
モゴモゴ言って彼に背を向けて寝るも、布団を思い切り剥がされた。
「朝食はちゃんと食べて貰わなければ困ります」
「ギャッ、何するのよ!」
急に寒くなってブルッと震えながら文句を言ったら、
私の執事が仁王立ちしていた。
彼は本多尊、二十四歳。
スラリとした長身に、夜の闇のような魅惑的な瞳。少し癖のある長い黒髪を後ろでひとつに束ね、黒い執事服を身につけている彼は、間違いなく私が出会った中で一番美しい青年。
だが、性格が最悪で私に過保護で口煩さく、ドS。
かく言う私は、水瀬撫子、十八歳。
ぱっちりした目に、日本人形のように真っ直ぐ腰まで伸びた黒髪は、私が小さい頃に亡くなった母譲り。
女子高等師範学校に通っていて、まだ結婚はしていないし、恋人もいない。
「いい加減起きてください。朝の稽古の時間です」
冷ややかに告げる尊に眉間にシワを寄せて言い返す。
「水瀬家の当主の娘にこの扱いはないんじゃない!もっと敬いなさいよ」
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