私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
3、新しい居候は猫の妖
暗闇の中、赤鬼が私の首筋に牙を立て、血を啜る。
深い深い闇。
『お姉さんの血、美味しいね』
鬼は楽しげにそう言って私の首をペロッと舐めた。
『い……や』
全身の力が抜けて抵抗しようとしても動けない。
これが……鬼。
下級の妖とは違う圧倒的な存在感と力。
水の術を使えない私は非力だ。
この鬼に血を吸われてただ死を待つしかない。
『こんなに美味しい血は初めてだよ。力が漲ってくる。最後の一滴まで頂くよ』
「や……めて」
声を絞り出すようにそう呟いたら、尊の声がして明るい光が見えた。
「撫子、大丈夫だ。もう鬼はいない」
その甘く優しい声に闇が徐々に消えていく。
赤鬼の姿も消えて、邪悪なものが浄化されていくような感じがした。
「み……尊?」
目を開けると私はベッドで寝ていて、尊が椅子に座って私の手を握っている。
赤鬼はいない。
夢を見ていたのか。
ここは……自分の部屋。読書灯だけがついていたが、真っ暗ではなくて安心した。
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