私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「もういいわ」
コップを返すと、彼は私をまた寝かせた。
「寝てください。まだ起きるのには早いですよ」
「尊も自分の部屋で寝なさいよ。私は大丈夫だから」
もっと優しく言えればいいのに、こんなかわいくない言い方しかできない自分に腹が立つ。
「いいえ。今日はそばにいます。急変したら困りますから」
彼の口調も素っ気ない。
だが、私のことを何とも思っていないのなら、ここにはいないでさっさと自室で寝ているはず。
きっとずっと私についていたのだ。
意地悪でドSな彼だが、なんだかんだ言っても心配性。
「……尊」
囁くような声でその名を呼ぶと、彼は椅子に腰掛けながら私に目を向けた。
「はい、何ですか、お嬢さま?」
今回の件でかなり彼に心配をかけてしまった。
私のそばを離れないのがその証拠だ。
赤鬼に血を吸われ、普通なら私は死んでいただろう。
身体はだるいけど、あれだけ鬼に血を吸われたのに痛みが全くない。
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