耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
前ほどではないが、美寧はあまり自分の主張を強く出さない。何か思い悩むことがあっても、それを怜にぶつけることは稀。
それはもしかしたら彼女が育ってきた環境もあるのかもしれない。
幼い頃に母を亡くし、家族と離れ祖父の元で育った彼女は、純粋で屈託がないが、身近な人にもどこか遠慮をしてしまうようなところがある。
(もっと甘えてくれたらいいのですが……)
黙ったまま手に持ったカップに視線を落としている美寧を見降ろしながら怜は考える。
どうしたら美寧がもっと自分に甘えてくれるのか、と———
怜は美寧の肩に腕を回すと、その小さな頭をそっと自分の肩に乗せた。
「れいちゃ、」
「言いたくないことなら言わなくても構いません」
美寧の動きが止まる。怜は肩に着く彼女の頭をそっと撫でながら言う。
「俺ではあなたの悩みを失くすことは出来ないかもしれない」
「そんなことっ」
慌てて否定しようとする声を消すように言う。
「それでも、俺はいつもあなたのことを一番に考えている。そのことを忘れないで———ma minette」
「っ、」
怜を振り仰いだ美寧の瞳が潤んでいる。
フロアスタンドの琥珀色の輝きが、薄い水膜でキラキラと輝く。その瞳がどんな宝石よりも美しく見えて、怜は思わず目を眇めた。
「わ、私……なんにも知らなくて………」
言いにくそうに口ごもった美寧に、怜は微笑んだまま「ん?」と首を傾げる。すると美寧が重い口を開いた。
「………『初恋は実らない』って………決まってるって……」
その言葉に、怜は目を瞬かせた。
『初恋は実らない』
一般的によく聞くその言葉を、今日は確か耳にした。
(あれは確か………)
ラプワールのマスターの娘さんを送って行った時———
美寧の潤んだ瞳が不安げに揺れる。