耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
堂々巡りの兄妹の言い合いに、高柳が割って入ろうかと口を開きかける。が、聡臣が先に言う方が早かった。

「既に父さんにも『美寧の居所が分かった』と報告してある」

「お父さまもご存じなの!?」

「ああ」

「お父さまはなんて………」

自分が怜と暮らしていることを知った父は、いったいどんな反応をしたのだろう。
食い入るように兄を見つめながら言った美寧に、聡臣は小さく溜め息をついて言った。

「父さんは、『美寧のことはお前に任せる』と」

「お兄さまに任せる………」

美寧は呆然と呟いた。
兄に言った『任せる』という父の言葉が、美寧にはどうしても違う風に聞こえる。

『美寧のことはどうでもよい』

父は美寧(そんなもの)にかまっている暇はない。だから兄に一任した。
そう考えると父の言葉がストンと胸に落ちる。

兄のように怒ってくれた方がまだ良かった。怒ると言うのは美寧のことを少なからず気にかけている証拠だ。
結局父は、美寧(じぶん)のことに興味がないのだ。


美寧の瞳に明らかな落胆の色が浮かぶのを見た聡臣は、慌てたように言葉を続ける。

「美寧。とにかくおまえはこんなところにいちゃダメなんだ。だから———」

こんなとこ(・・・・・)………?」

「ああ……とにかく帰ろう。美、」

こんなとこ(・・・・・)なんかじゃないっ!この家は……れいちゃんの家は……私にとって、とても大事な場所なんだからっ!!」

悲痛な声でそう言った美寧が、勢いよく立ち上がる。はずみで椅子が「ガタン」と大きな音を立てる。

「お兄さまなんて………だいっきらい!!」

「美寧っ!」

兄の制止を振り切るように、美寧はダイニングを飛び出す。彼女の後を追おうと怜が立ち上がるより早く、涼香が立ち上がった。

「私が行くから———」

そう言うと、涼香は美寧を追って出ていった。


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