耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
自分で言っておきながら、みるみる顔が熱くなっていく。見上げたままの彼の瞳が、ゆっくりと大きく見開かれていくのが分かった。

(しまった……また変なこと言っちゃったっ!)

珍しくはっきりと驚きを乗せた怜の表情(かお)
美寧は居た堪れなさに視線を泳がせた。

「あっ、でもそうだよね、せっかく早く帰って来たんだもん、早く寝た方がいいよね。もう夜遅いし、お仕事で疲れ、」

「ミネ」

「、てるだろうから、今日はやっぱりやめたほうが、」

勢いのまま喋っている間に、もう一度「ミネ」と呼ばれた。顔が熱くて堪らない。

「寂しい思いをさせてしまって、すみません」

頭の上から降ってきた声に、じわりと目頭が熱くなる。
目の間にあるグレーのシャツをきゅっと握ると、頭の上をそっと撫でられた。

「もう少ししたら山を越せそうです。そしたらゆっくり出来ると思います」

「………うん」

「そしたらまた“恋人練習”してくれますか?」

「………うん」

「頑張り屋のあなたに甘えてしまっているのは俺の方です。俺が仕事で忙しいからとあなたが我慢ばかりしていないか、仕事中も気になって仕方ありません」

「そんなこと……ない………」

途切れがちに返した言葉に、「本当に?」と怜が言う。

「俺にしてほしいことが何かあれば、いつでも遠慮なく言ってくださいね」

そう言われて、美寧は「大丈夫」と言おうとした口を閉じた。
少しだけ黙った後、怜のシャツを握る手にきゅっと力を込めると、おずおずと口を開く。

「いっ…しょに………い」

「え?」

「……今夜は一緒にいたい」

「っ、」

怜が息を呑む音が聞こえる。美寧は自分でも我がままを言っていると心の隅で思いながら、それでも懸命に言葉を続けた。

「起きてるときはあんまり一緒にいられないから……寝るときは……眠ってるときくらいは、一緒にいたい……」

言い淀んだが、最後まで自分の想いをぶつけた。

「だって……だって……全然足りないの………」

思い切って顔を上げ、怜を見つめて言った———『素直に』

「れいちゃんが、全然足りないんだもんっ!」




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