耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
挨拶のキスまでこうして唇以外にされてしまうと、もしかしたらやっぱり怜は怒っているのかもしれない、と不安になってしまう。
自分の口から本当の名前を明かさなかったことで、彼は美寧に幻滅したのかもしれない。
だから、“恋人練習”どころか挨拶のキスすらしてくれなくなった。
いや違う。そんなことない。
怜は美寧に『あなたが何者でもかまわない』と言ってくれたじゃないか。『迷惑なんて何もありません』とも。
少し前にも同じように怜が“遠く”感じた時があった。それは怜が『美寧のことを怖がらせて泣かせてしまった』ことを気に病んでいたせいだった。
あれは誤解だとちゃんと分かってもらえたはずなのに———
突然の兄の来訪から二週間近く経った今。
打ち消そうとすればするほど、どこからかひたひたと悪い考えが浸み込んできて、それを押し戻そうとすればするほど、不安になる。
食事が喉を通らなくなってきたのは、怜がいない寂しさのせいもあったが、そんな不安が彼女の胸を侵食しているせいだった。
怜の手で髪を梳かれる心地良さに集中できず、何か考え込んでいる風な美寧に怜はすぐに気付いた。
「どうかしましたか?」
ブラッシングの手を止めた怜。
「眠たくなりましたか?」
時計の針はもうすぐ【11】を指そうとしている。
「そろそろ寝ますか……」
そう言って立ち上がろうとした怜の服を、美寧はとっさに掴んでいた。
「ミネ?」
怪訝そうに呼びかけられ、ハッとする。どうして自分がそんなことをしたのか分からない。
なんでもない———そう言おうと口を開いた時、頭の奥で声がした。
『分からないことは素直に彼に訊けば良かったんだな、って———』
姉だと思って何でも言って、と相談に乗ってくれた杏奈。
彼女の言葉が頭を過った次の瞬間、美寧の口から言葉がこぼれ落ちていた。
「なんで……しないの……?」
「え?」
「こ、 “恋人練習”………最近してないから、なんでかなって……」
怜の服の裾を掴んだまま言った。
自分の口から本当の名前を明かさなかったことで、彼は美寧に幻滅したのかもしれない。
だから、“恋人練習”どころか挨拶のキスすらしてくれなくなった。
いや違う。そんなことない。
怜は美寧に『あなたが何者でもかまわない』と言ってくれたじゃないか。『迷惑なんて何もありません』とも。
少し前にも同じように怜が“遠く”感じた時があった。それは怜が『美寧のことを怖がらせて泣かせてしまった』ことを気に病んでいたせいだった。
あれは誤解だとちゃんと分かってもらえたはずなのに———
突然の兄の来訪から二週間近く経った今。
打ち消そうとすればするほど、どこからかひたひたと悪い考えが浸み込んできて、それを押し戻そうとすればするほど、不安になる。
食事が喉を通らなくなってきたのは、怜がいない寂しさのせいもあったが、そんな不安が彼女の胸を侵食しているせいだった。
怜の手で髪を梳かれる心地良さに集中できず、何か考え込んでいる風な美寧に怜はすぐに気付いた。
「どうかしましたか?」
ブラッシングの手を止めた怜。
「眠たくなりましたか?」
時計の針はもうすぐ【11】を指そうとしている。
「そろそろ寝ますか……」
そう言って立ち上がろうとした怜の服を、美寧はとっさに掴んでいた。
「ミネ?」
怪訝そうに呼びかけられ、ハッとする。どうして自分がそんなことをしたのか分からない。
なんでもない———そう言おうと口を開いた時、頭の奥で声がした。
『分からないことは素直に彼に訊けば良かったんだな、って———』
姉だと思って何でも言って、と相談に乗ってくれた杏奈。
彼女の言葉が頭を過った次の瞬間、美寧の口から言葉がこぼれ落ちていた。
「なんで……しないの……?」
「え?」
「こ、 “恋人練習”………最近してないから、なんでかなって……」
怜の服の裾を掴んだまま言った。